@InfoCanal®開発物語 @InfoCanal®開発物語

プロジェクトストーリー PROJECT STORY 02 @InfoCanal®開発物語

地震や台風、豪雨……。日本における自然災害は後を絶たない。
そうした状況下で、地方自治体は災害時に、住民に向けて情報発信を行う義務がある。
しかし近年は、災害の局所化やライフスタイルの変化により、
災害情報が届けづらいという課題が浮き彫りになっている。
2016年、その難題を解決すべく、NTT-AT内でプロジェクトチームが発足した。

PROFILE
  • M.M.
    M.M.
    2005年 
    新卒入社
  • N.K.
    N.K.
    2008年 
    新卒入社
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防災課題をITの力で解決する 防災課題をITの力で解決する

01背景 防災課題をITの力で解決する

海と山に囲まれ、水資源も多く、豊かな自然に恵まれている日本。一方、2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨など、近年は激甚化した自然災害が頻発している。日本の各自治体には災害時、住民に対して災害や避難に関する情報を伝えなければならない。これまで、多くの自治体が情報伝達の手段として用いていたのが防災行政無線だ。自治体の庁舎や電波塔からアナログ電波を送り、公園や住宅近くの鉄塔に設置されたスピーカーなどで、住民に向けて情報を発信するというもの。しかしながら、近年はゲリラ豪雨など災害の局所化や、生活環境の変化が起きており、防災行政無線では解決が困難な状況も生まれてきた。

  •  M.M.
    M.M.
    「近年の住居は密閉性・防音性が高く、暴風雨の際に屋外のスピーカーで音を鳴らすだけでは災害情報を出しても室内まで音が聞こえないという課題があります。また、スピーカーによる一方的な情報発信のため、情報が住民に伝わっているかどうか、自治体側が把握できないという問題も抱えていました」

この課題を解決すべく、NTT-ATが独自に開発を行ったのが「@InfoCanal®(アットインフォカナル)」だ。スマートフォンなどのIP通信網(インターネット)を利用して、様々な端末に容易かつ確実な情報配信ができるシステムとなっている。また、単に情報を送るだけでなく、情報の到達・受け取りが確認できるため、災害時の状況把握や救出活動などで役立てることも可能。いわば「次世代型災害情報配信システム」である。M.M.とN.K.は、プロジェクト発足時の2016年から中心メンバーとして携わっている。

  •  N.K.
    N.K.
    「防災行政無線は、情報伝達の課題だけでなく、使用されていたアナログの電波が2024年に利用できなくなるという問題もありました。電波をデジタルに切り替えるには、大規模な設備更改が必要なことに加え、そのための事前調査、設計も必要なため、長い年月と多額の費用がかかります。そうした事情に、財政面で苦慮している自治体もありました。そこで『@InfoCanal®』は、通信にインターネットを利用することで、手軽かつ費用を抑えて導入できる仕組みを構築しました」
先が見えない中での船出 先が見えない中での船出

02試練 先が見えない中での船出

自治体の課題解決に貢献すべく、意気揚々とスタートしたプロジェクトだったが、その道のりは前途多難であった。本件は、顧客から依頼を受けて製品開発を行うわけではなく、ニーズを先読みしてサービスに落とし込む投資開発。つまり、全てが手探り状態なのだ。またシステムを開発したとしても、どの程度需要があるのかは予測ができない。サービスの周知、販売方法も、豊富なノウハウがあるわけではない。課題は山積した。

  •   M.M.
    M.M.
    「先行投資の意味合いもあったのですが、どの程度の需要があるか予測しづらいため、サービスの開発予算も限られていました。本当に『@InfoCanal®』のようなサービスを導入してくれる自治体があるかどうか、コアとなる配信システムを開発した後は、市場調査に乗り出しました」

日本全国に自治体は1700以上ある。しかしながら、全ての自治体に商機があるとは限らない。どのような方法で自治体との接触を図り、サービスを周知していくか、試行錯誤の日々が続いた。

  •  M.M.
    M.M.
    「まずはNTT-AT内で、別の案件で繋がりのある自治体に対し、新規サービスとして紹介するところから始めました。また災害の頻度が高く、『@InfoCanal®』を活用いただけそうなエリアの自治体にアンケートを送り、災害時の情報伝達手段に関する課題を探っていきました。その後、実際に回答をいただいた自治体に電話でアポイントを取り、直接足を運ぶという流れで進めていきました」
  •   N.K.
    N.K.
    「営業担当がお客様先を訪れる際に、最初に開発したデモ製品を持参し、利用方法を実演しました。そうすることで、これまで使用していたものとの違いや『@InfoCanal®』の利点を認識してもらえます。また、同時にご要望や改善点もフィードバックいただくことで、それをもとに製品をアップデートしていくことにしました」

自治体の生の声を聞き、それぞれに合わせてシステムをカスタマイズし、ブラッシュアップしていく。現地でヒアリングを行うからこそ改善点が見えるようになり、市場のニーズが明確化された。販売予測も精度が上がり、開発への予算も徐々に増やすことができた。

先が見えない中での船出

03克服 いかにして、@Info Canalの価値を伝えるか

自治体への訪問数を伸ばしていく一方で、実際の設備導入には入札を経て落札しなければならない。そのため、早い段階で顧客のニーズを掴み、そのニーズに応じた提案を、いかにできるかが問われた。中には防災行政無線が長きにわたって利用されていたため、新システムを導入することを躊躇ってしまう自治体や、コストを重視してより安価なシステムを導入する自治体もあり、拡販は一筋縄ではいかなかった。

  • N.K.
    N.K.
    「プロジェクトを立ち上げた当時は、スマートフォンの普及率が今よりも低く、インターネット経由の情報発信について疑問を持たれているお客様も多くいました。また、災害情報の発信頻度についても地域差があり、頻度の少ないところでは費用対効果が良くないと判断されてしまうこともありました」
  • M.M.
    M.M.
    「そうした状況を踏まえ、改めて『@InfoCanal®』の利点を伝えるべく、参考情報の収集に奔走しました。2016年の熊本地震の時に、SNSが情報収集に活用された事例や、インターネット通信だからこその復旧速度の速さなどを強調。また災害情報だけでなく、地域によっては日常生活における通行止めや、ごみ収集に関する情報など、普段から住民に届けたい内容を配信できるように、システムをカスタマイズすることで、より導入しやすいサービスへと改良を重ねていきました」

防災システムにどの程度の予算を割き、どのような機能を求めるかは、自治体によって異なる。また、たとえ防災システムに大きな課題を感じている自治体であっても、入札前に課題の中身をきちんとヒアリングできていなければ、「@InfoCanal®」の良さを感じてもらうことは難しい。事前に直接話を伺い、カスタマイズされた『@InfoCanal®』のシステムを提案することが、落札に向けた重要なポイントであった。

04展望 現場に寄り添い、より良いシステムを構築する

販売開始当初はほとんど契約がなく、先行きに不安を感じていた「@InfoCanal®」であったが、徐々にその利点が浸透していき、2021年11月時点で30自治体以上、約5万人のユーザーが利用している。自然災害の増加やアナログ電波の利用期限といった背景はあったものの、その解決を可能にしたのは、各自治体の現場の声を吸い上げ、本当に求められるシステムに落とし込んだ彼らの努力である。

  • N.K.
    N.K.
    「当社の仕事において、全国の自治体に対して話を聞いて回る機会はほとんどありません。それゆえ、直接エンドユーザーの声を聞き、システム改善に役立てることができたのは、非常に良い経験になりました。社会的にも大変意義のあるプロジェクトですので、落札が決まり、『@InfoCanal®』を導入した際の達成感はひとしおでした」
  • M.M.
    M.M.
    「導入いただいた自治体のお客様からは、製品に対するフィードバックをいただいており、より良いシステムにすべく改良を重ねています。やはり現場にこそ答えがあると、再認識することができています。また、様々な地域の自治体を訪れる中で、過疎化や少子高齢化など他の社会問題も目の当たりにし、そうした分野でも当社の技術が活かせないかと視野が広がりました」

インターネットやスマートフォンの普及がますます進み、「@InfoCanal®」のニーズはさらに高まることだろう。NTT-ATは、これからも自治体の抱える課題に寄り添い、ITの力で社会に貢献してゆく。

現場に寄り添い、より良いシステムを構築する 現場に寄り添い、より良いシステムを構築する