WinActor®開発物語 WinActor®開発物語

プロジェクトストーリー PROJECT STORY 01 WinActor®開発物語

現在日本は、超高齢化社会が進み、労働人口の減少にも直結している。
40年後には労働人口が4割近く減少するとも言われており、あらゆる業界で人材難・人手不足に陥ることが予測されている。
そうした状況を改善するソリューションの一つがRPAツールだ。これまで人間のみが対応可能とされてきた作業を、
機械が代行する取り組みである。
2010年、業界に先駆けてNTT研究所とNTT-ATは、独自のRPAツール開発へと乗り出した。

PROFILE
  • N.K.
    N.K.
    1999年 
    キャリア入社
  • K.S.
    K.S.
    1994年 
    新卒入社
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現場の作業負担を減らし、生産性を向上させる 現場の作業負担を減らし、生産性を向上させる

01開発 現場の作業負担を減らし、生産性を向上させる

2010年、NTT研究所はNTTグループにおける作業効率化を第一目標として、RPAツールの開発を企画した。当時、NTTグループ内では様々な異なる業務システムを、用途ごと、または部署ごとに導入していた。オーダーの受付や問い合わせ、請求、設備管理など、各担当者がそれぞれ、データをシステム上に手作業で入力。そして入力後は、一つひとつ目で見て確認する必要があった。単純作業ではあるが、作業量が膨大になればヒューマンエラーも発生しやすい。また確認に時間がかかるため、人件費もかさむ。したがって、開発コストをかけず既存のシステムをそのまま使いながら、データ移行を自動で行い、膨大な量の単純作業を削減することができないかNTT研究所で検討を進めていた。NTT研究所とNTT-ATは、この課題を解決すべく、新システムの共同開発を開始。N.K.は当初、品質管理担当としてプロジェクトにアサインされた。

  •  N.K.
    N.K.
    「本システムのコンセプトは『既存の業務システムには手を加えずに、データ入力などの業務を自動化でき、現場の人が簡単に早く自動化プログラムを作れること』です。実際にシステムを利用するのは、各企業の現場の方々ですので、『現場フレンドリー』であることは重要な要素でした」
  •  N.K.
    N.K.
    「私が本プロジェクトに参加したときは、社内外含め50名くらいのチーム体制でした。私は品質管理や工程管理などに携わるようになり、徐々にプロジェクトマネージャーとして全体を見ていくことになりました。作業ボリュームのすり合わせ、必要人員の確保など交渉力・コミュニケーション力ともに鍛えられました」

開発中は小さなトラブルが続いたが、困難な状況を乗り越え、製品化まで到達。完成したのは、PC上で定型化された作業を自動化するシステム。具体的には、PC上でマウスの動きなどをコピーでき、単純作業をシステムが代行する仕組みである。低コストでの導入が可能で、業務効率化にも貢献できる製品だ。製品名は” WinActor®”。 2010年4月からおよそ4年の開発期間を経て、2014年1月から販売を開始した。

根底にあるのは「現場ファースト」の思い 根底にあるのは「現場ファースト」の思い

02市場へ参入 根底にあるのは「現場ファースト」の思い

営業担当のK.S.を迎え、「WinActor®」の販売を開始したが、販売当初は認知度の低さという最初の課題に直面した。

  •  K.S.
    K.S.
    「私たちの『WinActor®』が登場するまで、業務自動化ツールは一般的にその存在が知られていませんでした。お客様のもとに伺い、『マウスの動きを自動化するシステムです』という伝え方では、それがどのくらい便利なツールなのか、理解してもらえなかったのです。ただその一方で、システムを体験してさえもらえれば、ニーズが生じるに違いないと確信していました。そこでまずは、自動化のイメージをつかんでいただくための動画を作成してHPに掲載したり、お客様先での実演や、実際の作業の自動化などを営業時に行うことから着手しました。また、展示会に参加するなどして、製品の知名度を上げる取り組みも行いました。実際に業務が自動化されるプロセスを目の当たりにして、便利さに気づき、お客様の表情がパッと明るくなる様子は今でも覚えています」

普段、手作業で行っている業務を簡単に自動化できる。このことに驚く反応を見せる顧客は数多くいた。しかし、サンプルとして評価用ソフトウェアを提供しても、試用期間が終わると発注の連絡が予想よりも少ない。顧客にヒアリングを実施してみると、意外な課題が見つかった。システムの有用性は理解できるが、短い試用期間内では、システム導入後に顧客が自ら行わなければならない自動化シナリオが完成せず、発注につながりにくかったのだ。そこで、使い方のトレーニングメニューや根幹となる自動化シナリオ作成の支援もサービスとして提供するなど、より顧客目線での営業を行っていった。

  • N.K.
    N.K.
    「制作コンセプトにあった『現場フレンドリー』という目標は、営業時も常に心がけていました。ユーザーにとって使いやすいシステムになるように、できることはなんでもやるという意識です。1日に2件は営業に出向き、粘り強く『WinActor®』の魅力を伝えていきました。会社に戻れば不在中に来ていた問い合わせに対応し、新しい注文も請けていました。販売数が徐々に伸びてきてからは、忙しい時間を過ごしていました」

それまで存在していたRPAツールの多くは、プログラミングの知識が必須だったため、多くの企業が導入を躊躇っていた。本プロジェクトでは、プログラマーが不要で、現場で編集できる仕組みが優先された。この「高度な知識を必要としない」「簡単な操作で編集できる」という特徴が、他社製品との大きな差別化の要因となった。

またユーザーに寄り添う提案を心がけると同時に、営業ネットワークの拡大も目標に掲げた。NTTグループ内で認識されていても、一般市場ではまだまだ開拓の余地がある。NTTグループのリソースや顧客基盤、信頼を生かしながら、新規代理店開拓を行い、グループ外の企業へも営業範囲を広げていった。認知度向上から始まり、ユーザーのニーズに合わせた提案、一般市場への積極的な参入。開発担当と営業担当それぞれのノウハウを駆使して、売上目標をおよそ1年で達成した。二人は振り返ってこう話す。

  •  N.K.
    N.K.
    「ここまで大きく売り上げを伸ばせたのは、やはり現場のためになるものをつくろうという思いがあったからだと思います。現場のために操作を簡単にする、コストを抑える、要望を反映させる。繁忙期には常に緊張が張り詰めた中での業務になりましたが、そうした時期を乗り越えられたのも、現場ニーズに応える実感があったからかもしれません」
  •  K.S.
    K.S.
    「今でこそ一般的になりつつあるRPAという言葉ですが、実は我々も最初は知りませんでした。RPAという言葉が国内でも普及し、ブレークにもつながっていったと思います」
根底にあるのは「現場ファースト」の思い

03海外進出 国外にも勝機あり

2017年からは海外版の販売が開始された。K.S.は日本で起きているような業務効率化は、海外でもニーズが生じるだろうと考え、先んじて海外進出を目論んだのである。業種や企業規模も問わず使えるRPAツールが、英語版の製作によって、世界中で利用できるようになった。K.S.は海外営業においても、中心的な存在として重要な役割を果たした。

  •  K.S.
    K.S.
    「国ごとに工夫しながら製品の良さを伝えることが難しかったです。『WinActor®』の特徴の一つは人件費を削減できること。しかし、労働者が多い国では人件費がもともと安いため、製品のアピールポイントになりません。そこで、ヒューマンエラーをなくすのも一つの特徴であることを伝えると、興味を持って話を聞いてくれるようになりました」

オンライン会議ツールを使用した打ち合わせや導入支援を行い、距離や国籍にかかわらず現場に寄り添うプロモーション活動を続けた。現在は東南アジアとヨーロッパを中心に事業を展開している。商習慣の違いなどを鑑みつつ、今後も導入国を増やしていく予定だ。

国外にも勝機あり 国外にも勝機あり

海外でのプレゼンの様子

04今後の展望 より高度なRPAを目指して

国内外あわせて「WinActor®」の導入企業は6,800社以上にのぼる(2021年10月時点)。昨今、働き方改革や在宅勤務の環境も整備が進み、業務効率化はますます重要になっている。「WinActor®」が活躍するフィールドは、日に日に広がっているのだ。

  •  N.K.
    N.K.
    「デジタル技術による変革の一角に、RPAも存在しています。RPAが目指す最終目標は、人間の作業との互換です。ゆくゆくは、人間にしかできないとされてきたことを自動化したいと考えています。人間は目で見て覚えたり、耳で音声を聞き分けたり、過去の経験から推測したり、様々な感覚を組み合わせて情報を処理しています。そうした複雑な処理を機械が行うには、技術的な進歩が欠かせません。NTT研究所の最先端技術と、NTT-ATが持つ現場目線を組み合わせ、より便利なものを目指し、つくっていきたいです」

DX(デジタルトランスフォーメーション)はまだまだこれから伸びていく分野であり、RPAの寄与できる事項も多い。NTT-ATが取り組むRPAの挑戦は、これからも続いていく。

より高度なRPAを目指して より高度なRPAを目指して