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コラム
AI Deep Dive【38】AIエージェントはなぜ魅力的か/なぜ失敗するか/どう成功させるか
2026.04.07
2025年、「AIエージェント」がバズワードとなっています。Gartnerの「日本におけるクラウドとAIのハイプ・サイクル:2025年(2025年7月時点)[1]」では、AIエージェントは「過度な期待のピーク期」付近に位置付けられています。期待が急速に高まる一方で、現場では「思ったほど使えない」「運用に乗らない」といった声が出やすい局面でもあります。
本コラムでは、AIエージェントがなぜ魅力的に映るのかを整理したうえで、なぜ失敗が起きるのか、そしてどう成功させるのかを、目的・データ・業務フロー・評価の観点から考えます。
なぜ今AIがより注目されるのか
AIエージェント、ひいてはAIが魅力的に映る背景には、技術の進歩だけでなく、社会側の制約が強まっていくこともあります。労働政策研究・研修機構(JILPT)は「2023年度版 労働力需給の推計[2]」において、将来推計人口や経済成長の見通し等に基づき、2040年までの労働力需給(労働力人口、就業者数等)を複数シナリオで推計しています。
このように中長期では、限られた人材で付加価値を最大化することがこれまで以上に重要になります。そのため、人間の活動の一部を自動化で補う取り組みは避けて通れません。だからこそ、短期の失敗やコストを織り込みつつも、データの流れ・更新・成功条件・責任を具体化し、学習曲線を回せる形で進めることが重要です。その文脈でAIは「魅力的で、いま取り組むべきもの」として注目を集めています。
なぜAIエージェントは魅力的に映るのか
「AIエージェント」と一口に言っても、期待する内容は人それぞれです。ガートナーではAIエージェントを以下のように紹介しています[3]。
AIエージェントは、アプリやクラウドといったデジタル環境、そしてロボットやセンサー機器といった物理的な環境で、AIの手法を使って状況を把握し、判断し、行動し、目標を達成できる自律(または半自律)のソフトウェアです。つまり、人の細かな指示がなくても、最小限の監督で、必要に応じてさまざまなタスクや環境に適応して動作できます。
実際にGeminiを提供しているGoogleは、AIエージェントを以下のように紹介しています[4]。
AI エージェントは、AI を使用してユーザーの代わりに目標を追求し、タスクを完了させるソフトウェア システムです。推論、計画、メモリーが可能であることが示されており、意思決定、学習、適応を行うレベルの自律性を備えています。
これらの説明を分解すると、AIエージェントは次の要素から成り立っていると捉えられます。
- 人が事細かく指示を与えなくてもよい
- 業務目標を理解し、AIが自ら計画を立てる
- さまざまなツールを自動的に使い分けながらタスクに取り組む
- 自律的に動作するソフトウェアである
これらは、従来の「チャットで回答する生成AI」よりも一歩進んで、「仕事を進めてくれそう」に見える要素です。社内のデータや規約、業務手順を活用し、一定レベルの成果を短期間で出せるように思える点が、AIエージェントが魅力的に映る大きな理由です。
2040年には JILPTの「2023年度版 労働力需給の推計[2] 」によれば、女性および高齢者等の労働市場への参加が一定以上進むとした場合でも労働力人口は6536万人となり、2015年の労働力人口6630万人を割る形となります。
労働力が限られていく中、多くの分野、特にホワイトカラーでは「人」が「人」を管理するという形から「人」が「AI」を管理するということが主流となると考えています。我々は今までの働き方や生活の変化に適応することが必要となり、特にAIエージェントはその未来に大きく貢献する技術要素と捉えることができます。
なぜAIエージェント導入で失敗するのか
このように大きな期待を込めてスタートしたAIエージェントの導入ですが、「思ったほどの効果が出ない」「構築に手間がかかりすぎる」などこんなはずではなかったのにと、失望している例が少なくないのではないでしょうか。すぐに思いつくのは「利用しているモデルが良くない」と思うかもしれませんが、失敗の原因は「モデルが賢くない」ことだけではありません。むしろ、業務に適用する際の前提(目的・データ・フロー・評価)が曖昧なまま進むことが、失敗を招きやすいです。ここでは、よくある失敗パターンを挙げます。
目的が言語化できていない・理想形が曖昧
「なんとなく便利なエージェントが仕事をしてくれて、人手のコストが減り、人間はより高度な仕事に集中できる」といったイメージだけでスタートすると、汎用的ではあるものの「期待していた成果物とは違う」ものが出来上がりがちです。
まずは「何を成功とするのか」「誰のどの作業が、どの程度楽になればよいのか」を言語化し、関係者で合意したうえで始めることが重要です。
データや業務フローが整理されていない
仮に「この業務をやらせたい」という方向性があっても、対象データや業務フローが整理されていないと、次の問題が起きやすくなります。
- どのようなステップで処理すべきかが定まらず、適用すべきツールやルールを決められない
- 評価データが用意できず、改善の手がかりが得られない
業務フローやデータが曖昧なまま進むと、「熟練者が暗黙知でやっている判断」までAIに期待してしまいがちです。その結果、設計や検証の工数が想定以上に膨らむことがよくあります。
業務を分解してフローを作成し、必要なデータ(入力・参照・出力・ログ)と評価方法を明確にしていく必要があります。
現実の業務の複雑さを過小評価してしまう
LLMは急速に進化していますが、現実の業務は依然として複雑です。RAG(検索拡張生成)ではPDF文書を扱うことが多い一方で、図表の解釈、複数文書の突合、版管理(新旧混在)など、実務では「記憶」と「文脈の統合」が求められます。
人間が何気なく行っている作業は、実は多段の判断の積み重ねであることが多いです。この点の認識を誤ると、現実とのギャップが大きくなり、その分失望も大きくなります。
※LLM: Large Language Model (大規模言語モデル)は、多数のパラメータ(数千万から数十億)を持つ人工ニューラルネットワークで構成されるコンピュータ言語モデルを指します。著名なものはOpenAIが提供しているChatGPT、Googleが提供しているGeminiなどがあります。
※RAG:Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)。LLMが回答を生成する際に、社内文書や外部データベースなどを検索し、その情報を根拠として回答を生成する技術です。
100%を求めてしまう
AIエージェントは、複数ツールを扱えるがゆえに、意図しない動作(誤ったツール選択、誤更新、過剰な外部送信など)も起こり得ます。現実には、「100%業務から解放される」「100%の精度で正しく動く」といった状態を求めるのは難しいです。AIエージェントは人間が作った知恵(大規模なデータ)で出来上がっています。AIエージェントは対話を介した計画・実行という思考と試行の営みを表現(模倣)していると考えることができます。すると人間らしい間違いもAIエージェントに組み込まれてもおかしくはありません。
そのため、最終的な責任は人が持つ前提で、AIエージェントの出力や実行ステップを確認し、必要に応じて判断してから実行する設計が欠かせません。
AIエージェント導入はどうすれば成功するか
AIエージェント導入で成功するためには、先ほどの失敗要因を潰す必要があります。そのうえで私は、「AIエージェントを“人のように扱う”」ことが重要だと考えています。
これは「AIが人並みの能力でなければならない」という意味ではありません。むしろ、多少の誤解や勘違いが起きる“新人”を前提に、業務の目的・手順・判断基準を一つひとつ教え、伴走しながら育てていく姿勢が大切だという意味です。
具体的には、次の観点を押さえると成功に近づくと考えています。
**目的(成功条件)を先に決める**:何をもって成功とするのか、評価指標(品質・時間・手戻り・事故率など)を定義します。
**データの流れを描く**:入力・参照・出力・保存先・外部送信の有無を整理し、更新タイミングや版管理も含めて設計します。
**人の確認ポイントを設ける**:重要な更新・送信・削除などは、人が承認してから実行する形にします。
**小さく始めて改善する**:最初から業務すべてを全面的にAIエージェントに置き換えず、 対象業務を絞り、失敗パターンを収集して改善を回します。
さいごに
AIエージェントを導入するにあたり、現実の業務を理解し、どこまでAIに任せるのか、どのように育てていくのかを意識しておくことは非常に重要です。
AIエージェント自体を活躍させるためのシステム構築や、AIエージェントを利用して育てていく皆さまを伴走型でサポートする取り組みとして、弊社ではAIブランド「RelAi(リライ)」および「LLMカスタマイズサービス」を展開しています[5][6][7]。AIエージェントの活用をお考えでしたらぜひご相談ください。
[1] Gartner、「日本におけるクラウドとAIのハイプ・サイクル:2025年」を発表、https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20250805-cloudai-hc(2026/02/02閲覧)
[2] 独立行政法人 労働政策研究・研修機構、「2023年度番労働力受給の推計 -労働力受給モデルによるシミュレーション」、https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2024/284.html (2026/02/02 閲覧)
[3] AIエージェントとは?生成AIとの違い、活用例をわかりやすく解説(Gartner)、https://www.gartner.co.jp/ja/articles/ai-agents (2026/02/02 閲覧)
[4] AI エージェントとは定義、例、種類 | Google Cloud、 https://cloud.google.com/discover/what-are-ai-agents?hl=ja、(2026/02/02閲覧)
[5] NTT-ATの安心AIブランド RelAi™(リライ) | NTT-AT、https://www.ntt-at.co.jp/product/relai/(2026/02/02閲覧)
[6] RelAi™(リライ)ナレッジアシスタント | NTT-AT、 https://www.ntt-at.co.jp/product/relai-knowledge-assistant/ (2026/02/02閲覧)
[7] LLMカスタマイズサービス | NTT-AT 、https://www.ntt-at.co.jp/product/llmc/ (2026/02/02閲覧)
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AI Deep Dive
このコラムは、NTT-ATのデータサイエンティストが、独自の視点で、AIデータ分析の技術、市場、時事解説等を記事にしたものです。
次回は2026年5月12日にお届けする予定です。「AI時代の名寄せ」について掲載予定です。
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