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AIデータ分析コラム【27】生成AI活用術

2025.05.13

生成AIの最新活用術をご紹介します

近年、生成AIはビジネスや技術開発において大きな注目を集めています。文章生成、画像生成、音声合成、コード補完など、多岐にわたる分野でその威力を発揮しています。単なるツールを超え、ビジネスの競争力強化やイノベーションの推進力として注目されています。本コラムでは、生成AIの活用術について、具体的なビジネス活用事例と技術開発への応用、導入時の注意点を交えながら解説します。

1. 生成AIのビジネス活用事例

(1) カスタマーサポートの高度化

従来のチャットボットは、事前に用意された質問と回答のパターンに基づいて対応する、いわゆる「ルールベース型」でした。これに対し、生成AIを活用したチャットボットは、会話の文脈を理解し、未定義の質問にも柔軟かつ自然に応答することが可能な「生成型」のチャットボットです。
活用例として、対話ログの自動分析とフィードバックループの構築があります。これは、実際のユーザとの会話履歴をAIが自動で分析し、「どの回答が適切だったか」「どの部分に改善の余地があるか」といった情報を学習に反映させることで、チャットボットの応答精度を継続的に向上させていく仕組みです。

(2) マーケティングとコンテンツ制作

生成AIを使った広告コピーや記事の作成は、すでに多くの企業で当たり前になりつつありますが、最近ではさらに一歩進んだ活用が広がっています。例えば、複数の広告パターンをAIがまとめて自動で作成し、それを配信、効果を分析、改善案を反映して再配信という一連の流れを、ほぼ自動で回す仕組みが実現されつつあります。
これにより、これまで人手では対応が難しかったような細かいターゲットごとのアプローチが可能になり、広告の費用対効果の向上につながることが考えられます。
さらに、SNSやWebサイト上でのユーザの感情や反応をAIがリアルタイムで分析し、それに応じて表示するコンテンツを動的に差し替えるといった、よりインタラクティブなマーケティング手法も登場しています。

(3) 社内業務自動化とナレッジ管理

生成AIは、社内文書の要約や議事録の自動作成、マニュアルの簡略化など、日常業務の効率化にも幅広く活用されています。
最近では、社員一人ひとりのスキルや役職に応じて、必要な情報を最適な形で届ける「パーソナライズ配信」も行われています。例えば、同じ業務マニュアルでも、新人にはステップごとの詳細な説明、熟練者には概要だけを提示する、といった形で生成AIが出し分けを自動で行います。
このように、社員の理解度に合わせた情報提供ができることで、教育コストの削減や業務の習熟スピード向上が期待されています。

2. 技術開発における生成AIの活用

(1) コード生成とシステム設計の補助

AIコーディングアシスタントであるGitHub Copilot[1]などの普及により、生成AIがプログラミング作業を補助するのは、もはや珍しいことではなくなりました。最近は、単なる質問応答を超えて、要件定義から設計書、実装コード、テストケースの作成まで、開発工程全体をAIが支援するツールも登場しています。特に、短期間で仮説やアイデアの実現可能性を検証するPoCのような初期開発段階においては、生成AIが開発チームを強力にサポートします。

(2) 非構造データからの洞察抽出

従来のデータ分析は数値や構造化データが前提でしたが、生成AIは非構造データ(例:技術者のコメント、過去の障害報告、SNSのフィードバック)を解析し、重要な情報を抽出できます。例えば、IT運用現場で「過去の障害チケット」をAIが分析し、「障害の傾向」「対応パターン」「改善提案」を自動でまとめることに活用できると思われます。

(3) テスト工程の再構築

テストコードの自動生成はよく知られていますが、最近ではコード変更を感知し、影響範囲をAIが予測して必要なテストケースだけを再実行する仕組みが注目されています。
これにより、不要なテストを省き、開発スピードを落とさずに品質を保つことが可能となり、アジャイル開発やCI/CD環境においてテスト負荷の大幅削減が見込めます。

3. 導入時の課題と対応策

(1) 学習データの偏りとコンプライアンス

生成AIは、過去のデータをもとに学習しているほか、文脈の誤解や知識の不完全さなどの要因により、「正しそうに見えるが誤った情報」を生成してしまうリスクがあります。特に金融・医療・法務など情報の正確性が重要な分野では、こうした誤情報が大きなリスクになりかねません。
そのため、以下のような対策が有効と考えられます。

  • 信頼性を補強するツールとの連携:
    生成された内容が正しいかどうかを自動でチェックできる「ファクトチェックツール」と組み合わせて使うことで、誤情報の拡散を防ぎます。

  • 出典情報を表示する設計:
    回答の根拠となる情報源(参考サイトや文献)をあわせて表示することで、内容の信頼性を確認しやすくします。

  • 人による最終確認の仕組み(承認フロー):
    生成AIが出した回答をそのまま使うのではなく、専門スタッフが目を通してから公開・利用するルールを設けることで、安全性を確保します。

(2) AIの判断が「なぜそうなったか」が分かりにくい

生成AIは内部の仕組みが複雑なため、なぜそのような回答を出したのかが分かりにくいという課題があります(いわゆる「ブラックボックス問題」)。
そのため、説明責任が求められる場面では導入のハードルとなることがあります。

(3) 社内浸透のための「人との協調」設計

生成AI導入において、現場から「仕事を奪われるのではないか」という懸念の声が上がることもあります。
AIを“代替”ではなく“補完”と捉え、人とAIが協力するワークフローの設計と説明などが有効と考えられます。

4. まとめ

生成AIは、今後汎用的なツールから特定の目的に特化したモデルへと進化していきます。業界ごとのニーズに対応したプロンプトテンプレートやドメイン特化型の大規模言語モデル(LLM)が普及し、より精度の高い成果を提供できるようになるでしょう。生成AIは、今後汎用的なツールから特定の目的に特化したモデルへと進化していきます。業界ごとのニーズに対応したプロンプトテンプレートやドメイン特化型の大規模言語モデル(LLM)が普及し、より精度の高い成果を提供できるようになるでしょう。
さらに、リアルタイムデータの活用や、文章、画像、音声を組み合わせたマルチモーダル処理が進化し、生成AIは人間の理解に近づいていきます。現時点では限られた業務や部門での使用が中心ですが、将来的には業務システムや基幹業務と統合され、ビジネスプロセスの再定義が進むと予測されています。
また、当社ではお客様のシステムの業務効率化や課題解決に貢献する、生成AIを活用した「ナレッジ駆動型システム運用自動化ソリューション[2]」と「LLMカスタマイズサービス[3]」を提供しています。

参考文献
[1] GitHub Copilot, https://github.com/features/copilot, 2025年4月11日アクセス.
[2] ナレッジ駆動型システム運用自動化ソリューション, https://www.ntt-at.co.jp/product/da-knowledge-automation/ , 2025年4月21日アクセス.
[3] LLMカスタマイズサービス, https://www.ntt-at.co.jp/product/llmc/, 2025年4月25日アクセス.

執筆者

清水 瑠華(しみず るか)

NTTアドバンステクノロジ株式会社
アプリケーション・ビジネス本部 AIストラテジビジネス部門

生成AI、ネットワーク系のデータ分析の業務に携わっている

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AIデータ分析コラム

このコラムは、NTT-ATのデータサイエンティストが、独自の視点で、AIデータ分析の技術、市場、時事解説等を記事にしたものです。
次回は2025年6月3日にお届けする予定です。BIツールについて掲載予定です。

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