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AIデータ分析コラム【7】データ分析ことはじめ。SDGsをテーマに ~オープンデータを使って分析をしてみよう ~ SDGsへのデータ分析活用の一事例~

2023.02.07

SDGs という考え方が広まる中、各企業に対して SDGs に対する積極的な取り組みが要請されるようになってきています。そのようななか、実際に SDGs 対応の検討をミッションとして抱えているご担当者様の中には、次のような悩みを抱えている方がいらっしゃるかもしれません。

・そもそも取り組みのアイディアが思いつかない

・取り組みの効果を説明できない

まず、SDGsの17の目標と169のターゲットに、自社が今取り組んでいるビジネスが当てはまるかを確認してみましょう。その際、当てはまる目標は1つとは限りません。自社の特定のビジネスが、SDGsの複数の目標への取り組みに当てはまることもありますので、大きな視点で捉えることが大事です。そのうちのどれから注力するかを考える際には、効果が高いものから取り組みたいですね。効果を可視化する必要があります。また、取り組みの効果を説明する際にも、当然、効果を可視化する必要があります。効果の可視化にはデータ分析にもとづいた試行錯誤の繰り返しが力を発揮します。本コラムでは、データ分析をもとに効果の可視化を行う SDGs への取り組みの一事例について説明します。

データ分析をもとにした SDGs の検討

企業活動において SDGs への貢献のしかたは大きく分けると2つのパターンがあります。

▪️自社の取り組みとして SDGs に貢献する
▪️自社の技術・製品で SDGs に貢献する

17ある SDGs のゴールのうち、どのゴールをターゲットにするのかを決めるのは、データ分析というよりは企業の戦略・ポリシーの範疇と言えます。しかし、データ分析が全く関係ないかというとそうではありません。データに基づいた分析・検討を行うことで、以下のような効果が得られます。

▪️データに基づいた分析をもとに、SDGs にどの程度貢献しうるかをシミュレーションできる
▪️データに基づいて比較することにより、自社の強みが明確になる
▪️分析の過程で今まで知らなかった新たな気づきが得られる可能性がある

以降簡単な実例をもとに、データに基づいた分析・検討の雰囲気をご紹介いたします。

分析・検討の題材

テーマとして取り上げるのは、SDGs 7番目のゴールである「エネルギーをみんなに そしてクリーンに Affordable and clean energy」においてよく言及されている「太陽光発電」です。「太陽光発電」をコアとして SDGs に貢献する切り口は様々なものがあるかと思いますが、今回の分析・検討の素材とするのは「太陽光発電量の予測」とします。データに基づいた分析・検討を行うためには、当然ですが分析対象のデータが必要になります。今回は以下のデータを素材として分析・検討の説明をします。

▪️太陽光発電量
▪️出典:都道府県別発電実績(資源エネルギー庁 2021年度 統計表)(https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/results.html)

余談になりますが、データ分析の分野では活用できるデータの質・量の充実度合いが非常に重要になります。特に他社との差別化には、「自社しか保持していないデータ」が貴重な財産になります。データ分析作業を通じて自社の弱みと強みを把握でき、データに基づいた意思決定を行うことが可能になるためです。ただし、そのようなデータを保持していないとまったくデータ分析ができないかというと、そうでもありません。近年では機械学習やAI技術の発達に伴い、インターネット上に様々なデータがオープンデータとして公開されています。自社が保持しているデータだけでなく、このようなオープンデータを組み合わせることで、データ分析の幅を広げることが可能です。

分析・検討時の試行錯誤から得られる知見の活用

世の中のデータ分析事例をみると、いきなり「わが社のノウハウを生かして精度よく予測できます」という形で紹介されていることが多いですが、実際には試行錯誤の繰り返しです。ここでは意図的に(多少誇張して)試行錯誤の過程を例示していきます。この試行錯誤の過程で得られる気づきを SDGs の取り組みに活用できることが、データ分析の利点の一つです。

予測に使う入力データをみつけよう

太陽光発電量として利用するデータはすでに記載しましたが、発電量を予測する際の入力となるデータがまだありません。一番最初に思いつく入力データは「日射量」です。発電量が「都道府県別」「月別」のデータなので、「日射量」についても「都道府県別」「月別」に分解されているデータが欲しくなります。
そんな都合の良いオープンデータがあるかというと、、、ありました。

▪️日射量
▪️出典:年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)(NEDO)(https://www.nedo.go.jp/library/shiryou_database.html)

モデルを作ろう

様々な入力データから、目的のパラメータを導出するための考え方(実際には数式の集まり)を「モデル」と称します。先ほどの日射量から太陽光発電量を予測するモデルを作ってみようとすると、いろいろ考えないといけないことがわかります。

▪️日射量は測定地点ごとのデータになっており、なおかつ1都道府県ごとに複数の測定地点があるため、1都道府県としての日射量を計算しなければならない
▪️日射量は単位面積あたりのデータなので、発電に使われているパネルの面積のデータが必要
▪️日射の入射角度ごとの測定値があり、角度によって発電量が変わる効果を計算式に反映しなければならない

このように、使えるデータと実際の事象をすり合わせつつ、モデルを構築していきます。

モデルを改善しよう

モデルを構築出来たら、実際に太陽光発電量を導出してみます。導出した値が実際に測定した太陽光発電量に近ければ近いほどモデルの精度が良いといえるのですが、最初から精度が良いモデルができるケースはほとんどありません。

ここからが、ある意味データ分析の本番です。モデルにおける計算式の立て方を見直したり、モデルに足らない要素を検討していきます。仮説をたててモデルを改造し、新しいモデルで精度が改善しているかを確認する、という行為をひたすら繰り返します。例えば、太陽光発電量の予測であれば、次のような仮説をたてて、モデルに反映していきます。

▪️パネルのメーカーによって発電効率が違うのではないか
▪️雪が積もっている季節は発電効率が落ちるのではないか
▪️パネルの設置期間によって発電効率が徐々に劣化するのではないか

このような仮説検証を繰り返して得られる知見こそが SDGs の取り組みにおけるデータ分析の効果であり、大きな財産となります。もちろんこれは太陽光発電量の予測に限った話ではありません。SDGsの様々な取り組みにおいて、自身の取り組みを変えた時の効果を予測したりすることで、より効果的な活動につなげることできます。

データ分析が、SDGs にどのように貢献するかなんとなくイメージできたでしょうか。今回は SDGs 7番目のゴールである「エネルギーをみんなに そしてクリーンに Affordable and clean energy」のうち、「太陽光発電量の予測」という具体例で試行錯誤の繰り返しの説明をしました。しかしこの試行錯誤は特定の領域に特化したものではなく、データ分析での一般的な流れを具体例に当てはめて説明したものになります。SDGs の様々なゴールに向けて、データ分析の活用に、多少なりとも参考になれば幸いです。

データ分析を支える弊社サービス

ここまでは、SDGs における「太陽光発電量の予測」を題材として、どのようにデータ分析をして知見を SDGs に生かすかを簡単に説明してきました。「試行錯誤の過程で得られる気づき」が重要であること自体は理解できても、実際に大量のデータが目の前にあると、何をどのように考えていけばいいのかわからなくなってしまうことも多々あるかと思います。弊社では、長年データ分析に取り組んでおり、本コラムに記載したような「試行錯誤の過程」をご支援することが可能です。また、自らデータ分析を行う方向けにもご活用いただけるサービスも提供しております。

実際にデータ分析に取り組んでみようと思われた方に対して、データ分析業務の支援を目的とした弊社サービスをいくつかピックアップして紹介いたします。

関連する商材

Spotfire

まずデータ分析を行う第一歩はデータの可視化です。多数のデータを組み合わせて可視化することで、データ分析における気づきを得ることができます。もちろん表計算ソフトを駆使して可視化することもできますが、いろいろな切り口でグラフの見方を変えるには表計算ソフトの機能では不十分です。
弊社では、BIツールを用いてより便利な可視化をご提案することが可能です。

▪️Spotfire
 
BIツールを用いることにより、初期検討におけるデータ分析のための可視化だけでなく、継続的にデータを分析するための可視化も実現することが可能です。

需要予測ソリューション

弊社では様々なAIデータ分析ソリューションを提供しておりますが、そのうちの一つとして需要予測があります。

▪️需要予測ソリューション
 
本コラムでは「太陽光発電量の予測」を題材としていましたが、さらに電力の需要も予測し、需要と供給の差を減らすための予測の事例を紹介しております。興味のある方はご覧ください。需要予測パッケージソリューションのご紹介もしています。

DeAnoSは日本電信電話株式会社の登録商標です。

当社とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(株)は、Spotfireの販売契約を締結しています。

TIBCO、Spotfireは、Cloud Software Group, Inc.の商標または登録商標です。

執筆者

高野 孝英(たかの たかひで)

NTTアドバンステクノロジ株式会社
デジタルAI事業本部 アドバンスデータアナリシスビジネスユニット

入社以来、映像配信システム、テレビ会議システム、映像監視システム等のマルチメディア系システム開発に携わってきている。近年では、主にデータ分析にかかわる研究支援に従事している。

お問い合わせ

AIデータ分析コラム

このコラムは、NTT-ATのデータサイエンティストが、独自の視点で、AIデータ分析の技術、市場、時事解説等を記事にしたものです。

本コラムの著作権は執筆担当者名の表示の有無にかかわらず当社に帰属しております。

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