AIにより健康寿命を延伸し、社会保障費削減をもたらす
データヘルスシステムの研究開発
国立大学法人筑波大学
株式会社NTTデータ経営研究所
株式会社つくばウエルネスリサーチ
NTTアドバンステクノロジ株式会社
これにともない、2017年9月から、新潟県見附市(市長 久住時男)、茨城県常総市(市長 神達岳志)と共同開発体制を組み、今回の申請テーマ「自治体における保健指導の施策力に応じた最適な保健指導モデルを提示できるAIの開発研究」を開始します。
プロジェクトの特徴
本プロジェクトでは、筑波大学発VBであるつくばウエルネスリサーチ(久野譜也代表取締役社長:筑波大教授;以下TWR)が自治体と連携して構築してきた75万人以上の大規模データベース(健診、医療レセプト、介護保険、ライフスタイルデータなどを含むデータベース、以下、健康関連ビッグデータ)と、筑波大学久野研究室及びTWRがこれまで100以上の自治体の健康施策コンサルティングをしてきたノウハウを基盤に、2017年4月に筑波大学に設置された人工知能科学センターとNTTグループの最新AI技術、さらには見附市・常総市の現場に蓄積された経験知を融合させることにより、世界で初めて自治体の健康政策を支援するAIシステム(データヘルスシステム)を開発します。
本システムの具体的な要素は、1)課題発見・原因分析支援エンジン、2)課題解決にむけた保健指導モデル立案支援エンジンの開発です(図参照)。これにより、全国のどこの自治体においてもエビデンスに基づいた現状分析と施策立案を行う体制が可能となり、これが進むことにより自治体間の政策力の格差是正ひいては住民の健康寿命延伸、医療費・介護費等の適正化を実現します。
図1:本プロジェクトの概要
プロジェクトのポイント
- 国内外で初めて自治体の保健指導モデルの施策評価・立案を支援するAIを開発する点
- ブラックボックス型のAI技術ではなく、ホワイトボックス型の統計的機械学習手法(決定木、ベイジアンネットワーク)を活用する点
- NTTグループのAI関連技術をもとに、自然言語処理技術(固有表現抽出技術や概念検索技術等)を活用し、自治体の施策力(人材や予算力等)に応じた最適な施策候補の組み合わせを提示する点
- 医療保険・介護保険レセプト、健診データ、及び住民アンケート等の75万人分×5年の健康関連ビッグデータを活用して実施される点
- 健康増進分野での豊富な実績とAI技術の保有豊富な研究者に加え、保健指導施策の実務者を加えて構成している点
・予防や医療及び公衆衛生学領域の国の大規模研究の実績を持つ筑波大学、TWRのノウハウの活用
・筑波大学人工知能科学センター・サービス工学分野及びNTTグループが保有するAI領域における最先端研究の活用
・TWRが展開する健幸クラウドシステムのデータ及びノウハウの活用
プロジェク概要
必要性・背景
国は、健康寿命延伸に向け、全自治体に対してデータヘルス計画の策定、運用を義務付けています。この政策では、自治体は、住民の健診・レセプト等のデータを活用した施策の実施・評価、及び改善を行います。
しかし、自治体がデータを分析する場合、①十分な規模の分析データが集まらない、②自治体職員のみではデータ分析が困難である、③自治体ごとに施策を立案・遂行する施策力に格差がある、④上記解消のための人材育成には莫大な費用・時間がかかる等が課題となります。
目的
本プロジェクトでは、保健師等の自治体職員の保健指導施策立案力の強化をもたらすAIの開発を目的に設定しています。これは、自治体における効果的な保健指導モデルの施策立案により、ひいては健康寿命延伸及び医療費・介護費適正化を目指すものです。
開発にあたり、自治体の事業推進プロセスにおける、地域診断、施策策定(Plan)、施策実施(Do)、横断・介入評価(Check)、施策見直し(Act)の各段階での活用を想定し、以下のシステムを構築します。
1)課題発見・原因分析支援エンジン
自治体で蓄積されている健診・レセプトデータ等の健康関連ビッグデータを用いて、自治体ごとの地区別・疾病別の健康課題を察知し、その原因候補を特定します。
2)保健指導モデル立案支援エンジン
課題発見・原因分析の結果をもとに、課題を解決する最適な施策候補の組み合わせを、当該自治体の施策遂行力(人材、予算力)等の多様な変数に基づき設定した優先順位に従い提示します。また施策効果のエビデンスや先行事例、及び施策効果による医療費抑制効果のシミュレーション結果等を提示します。
図2:自治体の施策遂行プロセスとリンクしたAIを活用した保健指導システムの全体像
実施概要
1)課題発見・原因分析支援エンジン
2)保健指導モデル立案支援エンジン
※1 | 決定木とは、品質管理における層別・層化や、マーケティングにおける顧客セグメント分類などに用いられる統計的機械学習の手法です。病気の有無や医療費の高低を分ける要因と条件をデータから学習し、提示することが可能です。 |
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※2 | ベイジアンネットワークとは、事象の共起確率をもとに全体の因果メカニズムを推論する統計的機械学習の手法です。前提知識として先行研究や専門家が示す因果を組み込んだ、データ駆動型と知識駆動型の融合アプローチによる因果モデリングが可能である特長があります。 |
※3 |
NTTグループが保有するAI技術。1980年代から自然言語に関する研究を継続しており、自然言語で記述された文書から情報を抽出して知識として整理する高度な技術と実績を保有。 「corevo®(コレボ)」は日本電信電話株式会社の商標です。(http://www.ntt.co.jp/corevo/) |
※4 | 施策推進力とは、自治体の財政力、職員力、体制力等、施策を推進するための総合力を想定しています。仮に効果が高い施策であっても、難易度が高い施策を遂行するためには充分な施策推進力を持つことが必要になるため、変数として設定します。 |
プロジェクト体制
代表機関である筑波大学がプロジェクト全体の統括を実施し、1)課題発見・原因分析支援エンジンは筑波大学人工知能科学センター・サービス工学分野が主に開発し、2)保健指導モデル立案支援エンジンはNTTグループが主に開発を行い、3)保健指導システム基盤および保健師等が使いやすいUIはTWRが主体となり、研究開発を行います。
期待される成果
保健師等の自治体職員のPDCA実践力を的確にサポートして施策効果を高めることで、住民の健康寿命延伸や医療費・介護費の適正化効果が得られます。また各自治体が本システムを利用することにより自治体間の施策立案力の格差が是正され、ひいては国全体の医療費等適正化に寄与することが期待されます。
今後について
本プロジェクトでは、実際に自治体が利用でき、且つ「有償」であっても利用したいと考えるAIシステムの開発を行います。プロジェクト期間終了後には、広く自治体への普及に努め、全国の自治体への導入を目指します。他の自治体への展開を通じて、より広範・大量の健康関連ビッグデータが収集され、提示する保健指導モデルの精度向上、自治体間格差の是正等が実現するものと期待されます。参考資料
筑波大学とTWRは、本プロジェクト開始前から下記に示す保健指導に関わる取組を実施しており、本プロジェクトではこれらのノウハウをもとに住民の健康寿命の延伸、医療費・介護費の適正化等を目指していきます。お問い合わせ先
報道関係のお問い合わせ先
NTTアドバンステクノロジ株式会社
経営企画部 コーポレート・コミュニケーション部門
加藤一彦
TEL:044-280-8823
内容に関するお問い合わせ先
NTTアドバンステクノロジ株式会社
ソリューション第二事業本部 ビジネスロボティクスビジネスユニット
竹野浩
TEL:044-589-5390(代)