ユーザーの状況に合わせたタイムリーな情報配信の実現に向けて
エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社
なお、本成果は国立研究開発法人 情報通信研究機構(以下:NICT、理事長代行: 黒瀬泰平)の高度通信・放送研究開発委託研究「ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発」によるものです。
NTT-ATは、今後も本技術の実用化に向け実証および改良に取り組んでまいります。
概要
NTT-ATは、NICTの高度通信・放送研究開発委託研究「ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発」において「気象データ・地域ソーシャルデータを活用したリアルタイムデータ解析基盤技術の開発」として、人の動線や行動の変化をリアルタイムに解析する技術を開発してまいりました。本技術は、地域に配置された環境センサを利用して、天候の急激な変化など、刻一刻と変化する気象情報を捉えるとともに、Wi-Fiアクセスポイントの接続情報などからユーザーの状況を把握し、その状況に応じた情報提供を可能とします。
防災情報の配信では災害発生時、ベビーカー利用者や高齢者などの交通弱者のように、いち早く情報が必要となる人を把握することが重要となります。そこで、複数の軸を持つ多次元的なデータを同時に分類する技術であるNMTF(Non-negative Multiple Tensor Factorization)の特徴を活かして、ベビーカー利用者や高齢者等のユーザーの状況をより詳細に把握するための技術向上にも取り組んでまいりました。2017年度はこれまで開発してきた技術の有効性を検証するための実証実験を実施します。
実証実験について
(1)実施概要
実証実験では、観光公共施設の利用者へ貸し出しする端末のWi-Fi接続情報や気象情報をインプットとして、あらかじめ構築した学習モデルを用いて、リアルタイムにユーザーの状況を把握し、タイムリーな情報配信を行い、その有効性を検証します。
(2)実施時期
2017年9月~10月頃
(3)実施場所
観光公共施設
(4)実施方法
実証実験では、観光公共施設利用者をモニターとして位置情報の収集とアンケートを実施いたします。なお、モニターに関する情報の取り扱いについては、細心の配慮をもって実証実験を行います。
技術の活用シーン
特徴
NMTFは、異なるデータ間で共通的に現れる性質など重要な要素を抽出(因子分解)することができるアルゴリズムです。 NMTF技術を活用することで、下図のように複数のユーザーの状況を組み合わせて同時に分類することができます。
将来的には本技術を活用・発展させ、観光客などのユーザーがあらかじめ情報を登録しなくても状況に合った観光防災情報などを提供することができるようになります。
- 滞在位置や移動ルートなどからユーザーの状況(ベビーカー使用、高齢者など)を把握
- ユーザーの状況にあった防災情報や観光情報を提供可能
活用シーン
観光施設においてユーザーの状況にあったイベントをお知らせする例
- ベビーカー利用者にはベビーカーでも利用しやすい施設のイベントを案内
- 子ども連れには子どもが参加できるイベントを案内
ユーザーのいる場所の気温や湿度に合わせて、ユーザーの状況にあった熱中症対策の案内をする例
- 小さい子どもや高齢者には水分補給を促すとともに、近くの涼しい休憩スポットを案内
- 若者には飲み物を購入できる場所を案内
災害発生時に避難経路の混雑緩和のため、ユーザーの状況にあわせた避難経路を案内する例
- ベビーカー利用者へは階段のない経路を案内
- 若者には非常階段への経路を案内
今後の展開
NTT-ATは今後、NMTF技術を活用したビッグデータ解析技術の研究開発を進めるとともに、自治体と連携して本研究開発で得られた知見や技術の事業展開を検討していきます。
NMTFについて
NTT-ATはNTTから技術開示を受けた「高度高性能ビッグデータ活用技術」の一部であるNMTFを活用して、ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発に取り組んでいます。
NICT委託研究「ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発」について
公共性を有し社会に貢献するビッグデータのことを「ソーシャル・ビッグデータ」と位置づけ、ソーシャル・ビッグデータの高度分析による新しい価値創造を目的として研究開発を推進しています。
1 NMTF:Non-negative Multiple Tensor Factorization(複合非負値テンソル因子分解法)
クラウドイノベーションビジネスユニット(※)
(※)機構改革にともない、4月1日からは以下の組織にかわります。
クラウドIoT事業本部
IoTソリューションビジネスユニット