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SCS評価制度とは?対象範囲や★3と★4の違い、対応前に確認すべきポイントを解説
2026.10.01
SCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)は、経済産業省と国家サイバー統括室(NCO)が制度設計を進め、IPA(情報処理推進機構)が運営する、サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策状況を共通基準で、評価・可視化をする制度です。
まずは制度の全体像と評価レベルの違いを理解し、自社に求められる水準を整理することが対応の第一歩となります。
この記事でわかること
SCS評価制度への対応を検討する企業が増えています。今後は多くの企業において、取引先からセキュリティ対策状況の確認や説明を求められる機会が増えることが想定されます。
一方で、実務の現場では「自社は制度対応を検討すべきなのか」「★3と★4のどちらを目指すべきなのか」「何から準備を始めればよいのか」が分かりにくいと感じるケースも少なくありません。
この記事では、制度の全体像を理解し、対応を検討する際におさえておきたいポイントを解説します。
- SCS評価制度とは何か
- どのような企業が制度対応を検討すべきか
- ★3と★4の違いは何か
- 対応に向けて何を準備すればよいのか
- 制度対応を継続するためのポイント
1.SCS評価制度とは?まずはおさえたい制度の全体像
SCS評価制度は、サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策状況を共通の基準で可視化する仕組みです。制度の背景や目的、評価レベルの全体像を理解しておくことで、自社のセキュリティ対策状況を整理するだけではなく、取引先から確認を受けた際にも説明しやすくなります。
SCS評価制度が創設された背景
近年は、サプライチェーンを経由したサイバー攻撃が大きな課題となっています。自社で対策を実施していても、取引先や委託先の脆弱性が攻撃の入口となり、情報漏えいや業務停止につながるケースが発生しています。
こうした状況を受け、企業単体ではなくサプライチェーン全体でセキュリティ対策を強化する必要性が高まっています。
また、発注企業にとっては取引先の対策状況を客観的に把握しづらく、受注企業にとっては取引先ごとに異なる要求への対応を求められることが少なくありません。
つまり、SCS評価制度は、企業ごとにばらつきのあるセキュリティチェックを共通のものさしで整理し、発注企業・受注企業の双方が対策状況を確認しやすくするための制度といえます。
SCS評価制度の目的
SCS評価制度は、サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策状況を共通の基準で評価・可視化し、サプライチェーン全体のセキュリティ水準向上につなげることを目的としています。
また、発注企業と受注企業の双方にとって、セキュリティ対策状況の確認や説明に関する負担を軽減することも期待されています。発注企業は取引先へ求める対策レベルを分かりやすく示すことができ、受注企業は複数の取引先から類似の確認を受ける負担を減らしやすくなります。
このように、SCS評価制度はセキュリティ対策の優劣を競うためのものではなく、取引先との共通言語として活用されることが期待されています
★1~★5の全体像
SCS評価制度では、企業の対策状況を段階的に示すために複数の評価レベルが設けられています。
| レベル | 名称 | 対象イメージ・狙い | 評価方法 |
|---|---|---|---|
| ★5 | SCS評価制度(到達点) | 最先端の対策・国際水準(今後詳細化) | 検討中 |
| ★4 | SCS評価制度(標準) | 重要情報の保護・供給責任の遂行 | 第三者評価(監査) |
| ★3 | SCS評価制度(基礎) | 一般的なサイバー攻撃への対処 | 専門家確認付き自己評価 |
| ★2(※) | SECURITY ACTION | 基本方針の策定・公開 | 自己宣言 |
| ★1(※) | SECURITY ACTION | 情報セキュリティ6か条への取り組み | 自己宣言 |
★1・★2は、SECURITY ACTIONという既存の制度です。
まずは制度全体の位置付けを理解しておくことで、自社がどの水準を目指すべきかを考えやすくなります。特に多くの企業が検討対象となる★3と★4の違いについては、3章で詳しく解説します。
2.SCS評価制度の対象範囲
SCS評価制度では、どの組織やシステムが評価対象になるのかを理解しておくことが重要です。対応を進める前に対象範囲を整理することで、自社に求められる取り組みを把握しやすくなります。
どのような企業がSCS評価制度への対応を検討すべきか
SCS評価制度への対応を検討すべきかどうかは、企業規模だけで決まるものではありません。自社がサプライチェーンの中でどのような役割を担い、取引先との関係においてどの程度セキュリティ対策状況を説明する必要があるかを踏まえて考えることが重要です。
- 重要な取引先からセキュリティ対策状況の説明を求められる企業
- 委託先・再委託先を含むサプライチェーンに関わる企業
- 新規取引や取引継続に向けて、セキュリティ対策の説明力を高めたい企業
- 発注側として取引先管理を効率化したい企業
このように、SCS評価制度は受注企業が自社の対策状況を説明するためだけでなく、発注企業が取引先管理を見直す際の共通基準としても活用が期待されます。
そのため、対象範囲を整理する際は、IT基盤やシステムの範囲に加えて、自社の取引関係や説明責任の範囲も確認しておくことが大切です。
SCS評価制度の確認が想定されるIT基盤の主な領域
SCS評価制度は、サプライチェーンを構成する企業のIT基盤を対象とした制度です。クラウド環境を含むIT基盤が対象となり、主に以下のような領域が確認対象になります。
| 領域 | 確認対象の例 |
|---|---|
| IT資産管理 | PC、サーバー、ネットワーク機器 |
| ID・権限管理 | 認証基盤、アカウント、アクセス権限 |
| 脆弱性管理 | セキュリティパッチ、ソフトウェア更新 |
| ログ管理 | 監視ログ、アクセスログ |
| インシデント対応 | 対応体制、報告手順、教育・訓練 |
| 委託先管理 | 外部事業者の管理、アクセス権限管理 |
一方で、現時点で公表されている制度設計では、評価の中心はIT基盤であり、製造環境の制御システムや生産設備などのOT(Operational Technology)そのものは直接の対象とはされていません。
ただし、製造業では本社IT環境と工場システムが接続されているケースも少なくありません。そのため、制度の確認対象となるIT基盤が工場運用とも関係している可能性があることは把握しておくとよいでしょう。
3.★3と★4の違いとは?評価方法と求められる水準を比較
SCS評価制度では、企業に求められる対策レベルに応じて複数の評価段階が設けられています。特に多くの企業が検討対象となる★3と★4は、評価方法や求められる水準が異なるため、その違いを理解したうえで検討を進めることが大切です。
★3と★4の評価方法の違い
SCS評価制度では、★3と★4で評価方法が異なります。
★3は、取得を希望する企業が自己評価を実施したうえで、セキュリティ専門家による確認を受ける方式が採用されています。一方の★4は、第三者評価や技術検証を含む評価スキームが想定されています。
また、有効期間についても違いがあります。
| 項目 | ★3 | ★4 |
|---|---|---|
| 評価方法 | 専門家確認付き自己評価 | 第三者評価・技術検証 |
| 主な確認・評価主体 | セキュリティ専門家 | 評価機関 |
| 有効期間(※) | 1年 | 3年 |
| 想定利用 | 基本的な対策状況の可視化 | より高い水準の対策状況を客観的に示す |
有効期間の詳細は、今後の制度運用により変更される可能性があります。最新情報を確認してください。
★4は制度上の難易度の高さを示すものではなく、より広い範囲の対策や運用状況を客観的に確認するための評価レベルと捉えると理解しやすくなります。
★3と★4に求められる水準の違い
★3は、一般的なサイバー脅威に対処できる状態を想定した評価レベルです。一方で★4は、初期侵入の防御だけでなく、被害拡大の防止やサプライチェーン全体の強靭化まで考慮した水準が想定されています。
簡単に整理すると、次のような違いがあります。
| 評価レベル | 想定する状態 |
|---|---|
| ★3 | 一般的なサイバー脅威に対して、基本的なセキュリティ対策が実施されている状態 |
| ★4 | 初期侵入への対策に加え、被害拡大防止や組織的な管理・運用まで含めた対策が継続的に実施されている状態 |
重要なことは、自社に求められる水準を把握することです。
取引先との関係や事業特性によって求められるレベルは異なるため、まずは制度上の違いを理解したうえで、自社が目指す方向性を考えることが出発点となります。
そのため、評価レベルを選ぶ際は、制度上の水準だけでなく、取引先から求められる説明内容や、自社の事業上の重要度を踏まえて判断することが重要です。
4.SCS評価制度への対応でまず確認したいポイント
SCS評価制度への対応では、対策の実施やツール導入を急ぐ前に、自社の現状を把握することが欠かせません。求められる水準と現在の状況を整理することで、その後に取り組むべき内容が見えやすくなります。
自社の現状を整理する5つの観点
SCS評価制度への対応を検討する際、まず確認したいのは「現在どのような状態にあるのか」という点です。
例えば、セキュリティ対策そのものは実施していても、運用ルールが明文化されていなかったり、実施記録が残っていなかったりするケースがあります。また、担当者個人の知識や経験に依存して運用されている場合、組織として継続的に対応できる状態とは言えません。
まずは次のような観点で現状を整理してみるとよいでしょう。
| 確認したい観点 | 主な確認状況 |
|---|---|
| 1.対象範囲 | どの組織・拠点・業務を対象とするか |
| 2.ルール・体制 | セキュリティ方針、役割分担、対応手順の整備状況 |
| 3.技術的対策 | IT資産台帳、ID・権限管理、脆弱性対応、ログ取得・確認などの実施状況 |
| 4.記録・証跡 | 点検記録、教育・訓練記録、権限棚卸し記録、脆弱性対応記録、インシデント対応記録など |
| 5.委託先管理 | 外部委託先、再委託先、取引先との接続・アカウント・管理状況 |
ここで重要なことは、どのような対策を実施しているかだけではなく、その対策を説明できる状態になっているかを確認することです。
SCS評価制度では、実施状況の可視化や説明責任が重要なテーマの一つとなっています。制度対応を進める前に現在地を整理しておくことで、対応方針を検討しやすくなるだけでなく、将来的な評価や見直しにも役立ちます。
また、自社で実施している対策と求められる水準の差(ギャップ)を把握することも欠かせません。次のステップでは、その差を可視化し、どこから改善に着手すべきかを検討していくことになります。
5.制度対応は取得して終わりではない
SCS評価制度への対応は、一度評価を取得して完了するものではありません。取引先へ継続的に説明できる状態を維持するためには、日常的な運用、記録の保管、教育・見直しを継続していくことが求められます。
セキュリティ対策の状況は、組織変更、システム更新、新しいサービスの導入、委託先の変更などによって日々変化します。そのため、評価取得時点の状態を維持し、必要に応じて見直せる仕組みを持つことが重要です。
継続的な運用が求められる理由
SCS評価制度では、セキュリティ対策を導入することだけでなく、その状態を維持していることも重要になります。
例えば、資産管理や権限管理のルールを整備していても、その後の運用が行われていなければ、実際のセキュリティレベルは徐々に低下していきます。また、担当者の異動や業務変更によって、運用が形骸化してしまうケースも少なくありません。
制度対応を進める際は、対策を実施したかだけではなく、継続的に実施できているかという視点を持つことが大切です。
特に取引先から説明を求められた際には、過去の実施状況や運用記録を示せることが信頼につながります。評価取得そのものよりも、説明できる状態を維持することが長期的な価値を生み出すといえます。
年次見直し・運用維持の考え方
セキュリティ対策は、一度整備したら終わりではありません。ここでは、評価取得後も定期的に確認しておきたい代表的な項目を整理します。
新しいクラウドサービスの導入、組織変更、システム更新、委託先の追加など、企業を取り巻く環境は継続的に変化します。そのため、定期的な見直しを通じて、現在の運用状況を確認することが欠かせません。
継続的な運用で特に意識したい項目は以下の通りです。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 資産管理 | 新規導入・廃止機器が台帳へ反映されているか |
| 権限管理 | 定期的に棚卸しが実施されているか |
| 教育・訓練 | 実施記録が残されているか |
| ログ管理 | ログの取得・保管・確認が継続され、確認履歴が残っているか |
| 委託先管理 | 委託先・再委託先、取引先との契約、接続、アカウント、管理状況に変更がないか契約や接続状況に変更がないか |
| ルール・体制 | 組織変更や業務変更に合わせて、責任者・手順・承認ルールが見直されているか |
継続的に運用状況を整理しておくことで、評価更新や取引先からの追加確認にも対応しやすくなります。
制度対応を一度きりの活動にせず、日常的な管理プロセスに組み込むことが、長期的な信頼確保につながります。
また、取引先から追加の確認を受けた場合や、評価の更新が必要になった場合でも、日頃から運用状況を整理しておけば対応負荷を抑えやすくなります。
6.まとめ
SCS評価制度への対応では、制度の概要だけでなく、対象範囲や評価レベルの違いを理解したうえで、自社に求められる水準を整理することが重要です。
次のステップとしては、まず自社のルール・体制・技術的対策・証跡の整備状況を確認し、現在の対策状況と求められる水準との差を整理することが大切です。
自社がどの評価レベルを目指すべきか迷う場合は、現状整理を起点に、取引先から求められる説明内容や事業特性を踏まえて検討を進めましょう。
そして、次回のコラムでは「★3と★4のどちらを目指すべきか」について解説します。(10月下旬公開予定)すべての企業が最初から★4を目指すべきとは限りません。取引先との関係や自社の成長戦略によって最適な選択は異なります。自社にとって無理なく、かつ効果的な対応レベルを見極めるポイントを詳しくご紹介します。